会長挨拶

 2024年1月より、押海裕之前会長の後任として日本生体防御学会の会長を拝命いたしました鹿児島大学の原です。伝統と格式ある本学会の名を汚さぬよう、理事、監事、運営委員ならびに会員の皆様のご協力とご支援を賜りつつ、全身全霊をもって任にあたり、さらなる学会の発展に力を尽くす所存です。


 本学会の起源は、私の恩師である九州大学生体防御医学研究所の野本亀久雄先生が1980年代に開催した生体防御シンポジウムに遡り、1990年に正式に本学会が発足しました。本学会はこれまで、野本亀久雄先生、金ヶ嵜士朗先生、仙道富士郎先生、岡田秀親先生、光山正雄先生、吉開泰信先生、川上和義先生、松崎吾郎先生、赤池孝章先生、押海裕之先生らの歴代の会長のもと、ヒトやマウスなどの哺乳類のみならず、脊椎動物、昆虫、植物、真核生物、原核生物を含めた広範な種を対象として、個体の独立性と恒常性を維持する生体防御機構を把握することを目的に、学際的で包括的な学会活動を続けてきました。


 特に、世界がCOVID-19のパンデミックを経験し、それを乗り越える中で、政策決定における科学の重要性が改めて社会に認知され、生体防御研究への期待もさらに高まったと言えます。また、今回のパンデミックを通して、研究成果をどのように社会に還元し、実装していくかを研究者一人ひとりがより真摯に考えて日々の研究に取り組むべきであることを再認識させられたと言えます。こうした学術を取り巻く社会の変化の中で、本学会は単なる感染症学を超え、動植物全体の生体防御研究を通して、地球を一つの生命体として俯瞰し、その未来のあり方を世界に提言できる素晴らしい可能性を秘めております。しかし、我々が解決すべき課題は数多く残されています。そのためには現在の形にとらわれず、関連学会との連携を深め、合同学術集会開催や合併拡張も視野に入れつつ、より発展的な展開を目指したいと思います。


 さらに、日本学術界の最も重要な課題として次世代を担う若手研究者の育成があります。本学会の学生会員数も年々減少を辿っており、実効性のある対策を速やかに講じる必要があります。まずは研究の質を高めることが重要ですが、それ以外にも、例えば学術集会の運営をより時代に即した形に変え、若者にとって魅力的なコミュニュケーションの場となるような工夫を続けていくことも必要でしょう。また、青少年向けのアウトリーチ活動にも積極的に取り組み、研究者を志す若者を一人でも多く発掘する努力をしたいと思います。皆様のご支援とご協力を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

日本生体防御学会会長 原博満